南海ホークスをクビに。落ち込むノムさんを救った「なんとかなるわよ」
野村の哲学ノート③
■「私は女を取ります」
そこで私は、現状について相談するために、後援会長として後押しをしてもらっていた葉上照澄師(比叡山延暦寺阿闍梨)の元を訪れた。
そのとき、葉上さんから迫られたのが、
「彼女と別れなければ野球はできなくなるぞ。野球を取るのか、女を取るのか。はっきりさせろ」
ということだった。
それに対して、私は覚悟を決め、こう答えていた。
「私は女を取ります。仕事はいくらでもありますが、伊東沙知代という女は世界に1人しかいません」
その後、球団としても決断を迫られ、オーナー、球団代表、後援会長、後援者らが集まったトップ会談の末、私の監督解任が決定した。
その会談の中で、プロ野球選手としての資質と女性問題は別物であるとして、川勝傳オーナーだけは、最後まで私をかばってくれたそうだ。チームの強化に貢献した私に恩義を感じてくれていたこともあり、常に好意的に接してくれる人だった。
オーナーとしては、私個人の後援会長である葉上さんも当然味方をしてくれると思っていたらしい。しかし、葉上さんは「野村はもうクビにして結構だ」と話し、それが解任の決め手となったという。
実は、私が葉上さんに相談しに行った際、沙知代も同行していた。葉上さんに紹介して、話を聞いてもらおうとしたのだが、「帰れ」の一点張りだった。
その対応に激怒したのが、沙知代である。
初対面の阿闍梨に向かって、まるで臆することなく、
「坊主は法を説くって聞いてるけど、なんだその態度は! 好きなこと言いやがって! このクソ坊主!」
などと文句を言い続けた。口は災いの元ということだろうか、そこで印象を悪くしたことも、葉上さんが私をかばわなかった理由のひとつだったのだろう。